【1987、ある闘いの真実】観客数700万人 おすすめの韓国映画がヒットした3つの理由
韓国映画「1987 일구팔칠」
歴史映画でありながら、700万人をこえる観客動員数を記録した映画。さまざまな映画祭でも優秀作品にえらばれ、高い評価を受けた。
芸術性・娯楽性・歴史性の3つがそろった映画だ。
映画「1987、ある闘いの真実」は「崔順実(チェスンシル)ゲート」の朴槿恵政権政権下でひそかに制作が始まった。
韓国でキャンドル革命がおこり、朴槿恵政権が弾劾(だんがい)されなければ公開されなかった映画でもある。
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韓国で上映されたときのタイトルは、シンプルに
- 1987 일구팔칠 (イルグパルチル)
日本版では、原題にかならずサブタイトルが付け加えられる、という法則が今回も実証された。
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韓国での上映時期
- 2017年12月~2018年2月
監督
- チャンジュンファン
観客動員数
- 723万人
受賞
- 青龍映画祭最優秀作品賞受賞【2018年】
- 百想芸術大賞映画部門大賞受賞【2018年】
出演
- キムユンソク【役名 パクチョウォン】
- ハジョンウ 【役名 チェファン】
- ユヘジン 【役名 ハンビョンヨン】
- キムテリ 【役名 ヨンヒ】
- パクヒスン 【役名 チョヒョンギョン】
- イヒジュン 【役名 ユンサンサム】
- ムンソングン 【役名 チャンセドン】
- ソルギョング 【役名 キムジョンナム】
【あらすじ】
1987年1月、警察の調査を受けていた22才の大学生が死亡する。その証拠をいんめつするため、警察のパクチョウォン【キムユンソク】の主導のもと、死体をすぐに火葬するよう要請する。
火葬のためには、検事のサインが必要だった。
当直の検事チェファン【ハジョンウ】はこれを拒否し、司法解剖を命じる。
窮地に追いやられた警察は、青年の死は単なるショック死であると弁明するが、現場に残された数々の証拠と、解剖の結果は、拷問による死亡を示していた。
事件を取材していたユンサンサム【イヒジュン】は、「大学生は拷問の途中に窒息死した」と報道する。
パクチョウォンは、取り調べを担当していたチョヒョンギョン【パクヒスン】ら2人を逮捕し、事件を隠ぺい縮小しようとするが。。。
【見どころ】
歴史的な事件を、豪華な俳優たちが緊迫感をもって再現する。映画は当時の実際の映像を交えながら、現代と結びつけ、リアルにえがいている。
重いテーマなのに、一気に見てしまうのは、【人間】をえがいているからだ。
善と悪、という単純な対立としてではなく、いろんな感情が交錯するヒューマンドラマにスポットを当てている。
映画「1987、ある闘いの真実」には、その時代を生きた、さまざまな階層の人間が登場する。
繊細な人物描写とともに、映画的なおもしろさとダイナミックさがある、魅力的な映画。
当時の女子大生の視点を通して、韓国の激動の時代である「1987年」を描いた監督の手腕はみごとだ。
歴史が現在につながっている、ということを教えてくれる。
映画「1987、ある闘いの真実」がヒットした理由【3つ】
- 理由①「キャンドル革命」(2016年~2017年)という時代背景とマッチした
- 理由② 歴史をえがきつつ、【人間】にスポットライトを当てている
- 理由③ 出演する俳優たちが超豪華
【感想】
映画「1987、ある闘いの真実」は、2017年12月末に封切られた映画だ。2018年1月に入り、観客動員数はどんどん増加。
2月7日時点で、韓国映画「1987」は観客動員数700万人を突破する。
映画は、40代の親世代と20代の子ども世代が一緒に観覧する姿が多く見られたという。
40代にとって、1987年は10代の記憶だ。
つまり、40代にとっては生きた歴史なのだ。
20代にとって、1987年は教科書の中の歴史だ。
それを、2016年~2017年にかけて韓国で起こったキャンドル革命とリンクさせ、映像で生き生きと体感させたところにこの映画のすごさがある。
韓国映画「1987」は、娯楽映画ではない。
歴史映画だ。
歴史映画が、これほど多くの観客の共感を呼ぶ、というのはすごいことだ。
韓国映画「1987、ある闘いの真実」のテーマは重い。
でもその中にユーモアや恋愛、肉親の愛など、人間の感情が散りばめられているので、時間を忘れて没頭してしまう。
何よりすごいのはカメラワークだ。
これぞ、映画!という感じ。
超豪華なキャスト
また、登場する俳優たちが超豪華。今、韓国映画でピンで主役をはれる俳優たちが大挙出演しているのだ。
だから、その演技の質のレベルもすごい。
それだけでも、見る価値がじゅうぶんにある。
韓国映画のタイトル、というのはシンプルだ。
この韓国映画「1987」もそう。
日本でのタイトルは「1987、ある闘いの真実」だが、韓国でのタイトルは「1987 일구팔칠」。
1987年というのは、ソウルオリンピック(1988年)の1年前だ。
当時、韓国は独裁政権の下にあった。
韓国映画「1987、ある闘いの真実」は、一人の学生の死から始まる。
当時、権力をふるった治安警察が政治犯を取り調べる、悪名高い
- 南営洞 남영동 対共分室
取り調べ中の拷問で、22才の若者が亡くなったのだ。
キムユンソクは、この死を隠ぺいしようとする。
検事のハジョンウのもとに書類を持ってきて、ハンコを押すよう強要する。
今日中に死体を火葬しようとするのだ。
暗黒時代に風穴をあけた良心のたたかい
ハジョンウは抵抗する。逆に「死体保全命令」を出し、死体を解剖して死因を究明しようとする。
人権も何もなく、とにかく暴力でいうことをきかせる。
そのような、韓国の暗黒の時代を、良心的な人々が少しずつ風穴をあけていく。
闇に葬られようとした若者の死が、言論の弾圧の隙をぬって、報道され、それが韓国民の知るところとなる。
拷問で亡くなったのは、パクチョンチョルという延世大学の学生だ。
社会の不条理にたたかう若者と誠実な人々がえがかれる
社会の不条理に対し、若者たちが純粋な正義感でたたかう姿とともに、社会のいろんなところで、誠実に生きようとする人たちの姿がこまやかにえがかれている。圧倒的な迫力と、リアルな演技で、見ているものを引きこんでいく。
意外なことだが、この韓国映画「1987」の主役はキムユンソクだ。
政権のもっとも手先となって、反共の先鋒となった人物が実は、朝鮮戦争の時に、北から南に来た人物だった。
それぞれが、過去の歴史の中で、家族を失う経験をし、それがゆがんだ歴史観となる。
映画「1987、ある闘いの真実」は、そこに焦点をあてている。
だから、たんなる白と黒ではない、人間のにおいがするのかもしれない。
この役をハジョンウが演じたら、めちゃめちゃ冷酷な人物になったと思う。
キムユンソクだったので、非情な顔の奥にひそむ、人間的な弱さが表現されていたような気がする。
キムユンソクは、演技力のある、魅力的な俳優だ。
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キャンドル革命につながる韓国の歴史がわかる映画
おそらく、この韓国映画「1987」の時代に青春を生きた韓国人にとっては、少し前の歴史であり、韓国の若者にとっては、親たちの世代が、社会を変えるためにたたかった時代の記録なのだろう。2016年から2017年にかけて、韓国全土をおおったキャンドル革命。
大統領を弾劾し罷免に追い込んだ、すべての韓国人にとって、韓国映画「1987」の時代は、生々しい革命の歴史なのだ。
韓国の歴史に関する、基礎知識(ざっくりしたものでもいい)があると、韓国映画や韓国ドラマが今より10倍おもしろくなる。
この機会に、韓国の歴史にかんする概説書を読むのもいいかもしれない。
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